スナックelve 本店

バツイチ40代女の日記です

見えない壁に覆われた町からの手紙

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誰にって決まってない手紙の書き出しって困るものだ。とにかく腹が減っている。

いろんな壁があるみたいだ。ウチの町の壁は透明だ。だけど向こう側からはこちらが見えないらしい。
最初のころ見かけた周辺の町の人、最近は見てない。見ても悲しくなるだけだから壁に近づかなくなったし、向こう側の人も壁に近づかなくなったのだろう。

エネループを見つけた。もちろん自分のではない。ひょっとすると、いつか壁が消えるかも知れないから、詳細は書かない。とにかく久しぶりにスマホを充電できた。スマホも自分のではないけれども。

メールソフトがいきなり立ち上がって何通かのメールを受信した。このメーラーUGORIMというらしい、fromもtoもない。これを読んでる人も同じだろうか。本当に誰かが読んでくれるのだろうか? とにかく一方的に書くしかないのでウチの町のことを書く。

ウチの町は見えない壁で分断された後さらに分裂した。最初はこの町に唯一ある高校の校長と町内会長の口喧嘩だったと噂で聞いたが本当のことは知らない。あの頃は適当に飯が食えてよかった。2人には警察官の甥っ子とヤクザの親戚が近所にいた。それが原因なのか何なのか、死人が出た。
最初に殺されたのは校長だったが、犯人はヤクザってことになっている。俺はだいぶ怪しいと思ってる。警察官は、いまだに校長派と自称している。

町内会長は地主でヤクザと共に川の東側をアジトにした。んで、西側に校長派が住み始めた。この町は川でいい感じで二分されていたのだ。あの頃から自由に飯が食えなくなった。こっちでは食料は警察官が管理するようになった。

最初、とにかく警察が正しいだろうと校長派に行った連中は今では警察官に絶対服従状態で非常に息苦しい生活をしている。俺のことだが。
俺達は町内会長達をヤクザ派と呼んでいるのだが、正直あちらの方が和気あいあいとしていて過ごしやすそうだ。たまに川の向こうで元気にはしゃぐ子供を見かける。うらやましい。俺はもう警察官の前で愛想笑いをして食料を分けてもらうだけだ。

しばらくの間、お互いの縄張りから出ずに不干渉を貫いていたのだが、そろそろヤバいと俺はにらんでいる。冬が来るからな。
コチラのスーパーは食料が尽きかけてる。あちらでは野菜の栽培を成功させたと噂で聞いた。肉が食いたいが野菜でもいいから腹いっぱい食いたい。

そもそも最初の口論は子供達に将来のために教育するか冬に向けて労働させるかだったらしいなんてコトをふと思い出した。結局、校長派で教育したなんて話も聞かないのだが。
教員、学生と若い人が多いのが強みか・・・強みって何だよな。自分が、だんだん物騒な考え方になってる気がする。

俺はとにかく冬が怖い。冬が来る前に壁が消えないものだろうか。無理か。
何事もなくに冬を越えられるといいのだが。肉が食いたい。