スナックelve 本店

バツイチ40代女の日記です

『家族八景』

今週のお題「読書感想文」

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)(1156円)

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※価格はデータ取得時のものです

人の心を読める七瀬さんが住み込みで家政婦しながら転々とする話。なんかこの、心を読める七瀬さんの話をほかにも読んだ気がするが思い出せない。
もう一人テレパスの子が出てきて、OKが赤い楕円。NGは青いバツでイメージするとかそんな話だったような。
それで私は、たとえ仮に人の心を覗き見ることができても、その人の考えの癖を知り、連想するものを把握しておかないと、「そこにあるもの」(=読み込んだ心)が何を意味しているのか、まったく分からないかもなぁなんて思った。

多分その七瀬さんの若いころの話。七瀬さんは心を読む。基本的に心は文章化されているので上記のような意味わからないってことにはならない。(画家がちょっと抽象化しててわかりにくかったけど)

私が生まれる前の作品。まだ少子化なんて夢のまた夢。ちょっと上級家庭なら住み込みの女中さんがいても普通だったのかな? 55歳で定年退職とか言ってるw
まだまだこれから右肩上がりを信じて疑わない時代を、静かな目で見つめている感じ。
筒井さんですからね(;´Д`)

直観力のすぐれた女性はすべて、その鋭さを隠して、たとえうわべだけにせよ家庭の平和を維持するため、自ら軽蔑され無視されるような精神構造を持つ必要があるのだろうか。そうしてこそ、最も利口な妻といえるのではないだろうか。

時代は変わっただろうか?

8つの家庭の物語が描かれる。どの家庭も表面上は平和を装い、顔を合わせれば心の中で毒づき合い文句を言い合い軽蔑し合う、本音を言わないことで「家族」を守る。
まぁ、そんなもんではあるよな。人間関係、いちいち本音言ってたら面倒でしょうがない。
家族愛ってのは普段自覚して出てくるものでもないだろう。それにしてもちょっと不仲の家族ばかりw

無視をすること、されること、軽蔑あたりの感情が強く書かれていたかなぁ。
あと性欲? 若くありたいという心を含めて。性と生への執着。

あと読み終わって思ったけど、主人公七瀬が18-20歳の間か描かれていて、美人だってのはわかるんだけど髪の長さ一つ描写されてない。なんか外観なんて気にしてない感じが好き。
家政婦なのに髪をまとめるとかの描写がないので多分短めなんだろうと思ってイラストを描いた。
でも家政婦なのに女主人が茶碗洗ってたり食事を作ってる描写があって、なんかあんまりその辺は興味なかったのかも。男性が書いてるっぽさを感じた。

七瀬が聖人君子でもなければ小悪魔でもなく、10代らしい、好奇心に負けて人の心を覗きまくる感じで、たまには実験もして、廃人を生んだり自殺者を出したりしても特に罪悪感は無いようで、いやもうお前、ちょっとやめておけよと思う場面もあったw

死は虚無だと書かれていた。生は虚無ではないのだろうか。

めちゃくちゃ汚くて臭い以外は特に問題なかった家庭を七瀬が掃除しまくったら家族の内心に恥ずかしさから攻撃性と汚さマウントが始まって七瀬が堪えられなくなる話が印象的だった。