スナックelve 本店

バツイチ40代女の日記です

世界の広がり。あるいは私の人生の減退期の実感

f:id:elve:20210913214437p:plain
ずっと「上」を見て生きてきた、と思う。
北海道の片田舎に生まれて、声優になりたくて札幌に通ってみたり、高専情報工学科の人とつるんだり。
両親は高卒で、私は勉強が嫌いで、でも「上」に行かないといけないと思っていた。つらくても。
両親も「上」を目指してあがいていた。家庭内が荒れていた。

母と折り合いが悪く、微妙に居場所がなかった。
なんで私にはなにも、期待すらも与えられてないのだ。ろくでもない兄にはあんなに期待して失望して悩むのに。
「手のかからない良い子」のままで生きるしかないのか。
20で家を出た。早く自立しなくてはいけない。早くこんな家から離れて、もっと「上」に行くんだ。

悲しいことが多かった。
ありとあらゆる弱者の話題が刺さった。
女だった。
家事全般が苦手で部屋が汚かった。
B型だった。
発達障系の性格だった。
躁鬱だった。
アダルトチルドレン
毒親
最近だとヤングケアラーの話も刺さった。
高専生のとき小学校の参観日に行ってた。
小学校高学年の弟が成人したての私に聞いた。
「僕はお姉ちゃんの子供だよね?」
メンタルが不安定な両親のケアというか感情のゴミ箱だった。
自分に合う男を見つけるのが下手だった。
離婚した。
子供もいなかった。
将来はなにもない。
なんで、あたしにはなにもないの。
なんで生まれてきたんだろう。生まれてきてゴメンなさい。っつーか生まれたくなかった。

親ガチャ、か。ハズレだな。
もっと頭が良いか悪いか、どっちかに振り切れていたら、もっと幸せだったんだろうなぁって、よく思ってた。

同居人に出会った。
同居人は45年間、ほぼ実家に暮らし、母親が好きだ、俺のカーチャンはすごい人なんだと笑う。

彼の母は人の予定を聞いて無視する。
彼の母はボケた夫を放置する。
彼の母は同居している子が病的な肥満になっても放置している。
彼の母は・・・たぶん・・・ろくでもない人間だ。*1

彼は悪気なくなにもできなかった。甘やかしていたと彼の家族は言っていたが、放置されていたのだろうと思う。
彼は自身を客観的に評価できず、ふわふわと浪費することと酒に逃避することを好み、身の程知らずな夢を口にする。
その未来はあまり明るくはない。

彼はなにも知らず、なにかを知ろうともしない。ググれないカスだった。
10年以上倉庫で働いていて、勉強しようとも資格を取ろうともしなかったようだ。

あそこに行きたいここに行きたいと希望は言うが、そのページに有るマップすら開こうとしない。方向音痴の私が間違えながらナビする。
名探偵コナンが好きだといいながら、視聴中に酒を取りに席を立つのが平気なようだった。与えられる情報に興味がさほどないのだ。

45年東京に住んでいて、金木犀を知らないと彼は言う。

同居人のおかげで私は親に与えられていたものを知る事になった。
自分が取得しやすい情報を探すこと。想像すること。備えること。
季節の植物の名前。木の実の味。花の美しさ。
相手に興味を持つということ。期待すること。裏切られること。感情をぶつけること。
正しくはなかったけど、ソレが私のプロトコルなのだ。ソレは、間違いなく愛だ。

人を見下し、その家族を見下し、ああ、この一家より私の家は随分まともで素晴らしい家だった、と思うことは決して褒められることではないだろう。
でも本当に、今まで見向きもしなかった「下」の世界に触れて、私は親に心から感謝できるようになった。この歳で大きく世界が広がった感じがした。
そして、どんなに主観が幸福でも、こうはなりたくないと思う自分を認識した。

同居人がクズすぎて自己肯定感が高まる、と人にはいうのだが、そこで私が肯定してる私を作り上げた大きな要素が両親なのだ。自信を持って肯定できることを感謝する。*2

そして目線が下がったということが、私の人生はここから上には向かわないことを示唆している。人は見えるところにしか向かえない。

新しい扉を開け
海に出れば
波の彼方に
ちゃんと果てを
感じられる
『Hello, Again 〜昔からある場所〜』

せめて前を見て生きていこう。できればちょい上は見て生きたい。身の程はわきまえて。
同居人は疲れるだろうから、ついてこれるだけついてこればいい。その分、君には「ちょっと上」を見せてあげられるよ。
・・・・・・たぶんね。

*1:とはいえ子供3人を生み育てているので私より価値のある人生だとは思う

*2:引き続き躁状態である